Art
美しい舞を踊る白拍子の情念を表現
歌舞伎の「京鹿子娘道明寺」に着想を得て美しい舞を踊る白拍子の情念を表現した作品。舞を舞う中で、心の中がどんどん変化していく白拍子花子がいる。この作品は、黒地の着物にすることで、桜の花びらの模様の際立ち方も変わっていく。桜の花びら模様の着物に金の帯を締め、黒にピンク色の桜というコントラストが陶芸作品とは思えない華やかさを表現している。
作品本体は手捻り、表面装飾は線彫り後に泥彩で下絵を施し、素焼をする。泥彩とは泥と顔料や金属を混ぜ合わせた色泥土を素焼前の素地表面に彩色する下絵の技法である。この色泥土を筆にて少しずつ塗り重ねて凹凸をつけるのであるが、何度も何度も塗り重ねて模様を盛り上げ、立体的に仕上げる。この凹凸のある下絵装飾が彼女の最大の特徴であろう。
下絵を施したのちに素焼、施釉して本焼し、更にマット金、マット白金で金彩を施す。素焼、本焼、金彩に至っては3回焼成、完成までには計5回焼成する。なぜ金彩を3度も焼成するのかーそれは、自身が求める金色、白金色の深さを求めるためである。彼女の作品への執念が唯一無二の芸術へと昇華させている。
「京鹿子娘道明寺」は、舞を踊る白拍子花子にのりうつった清姫が姿を変え、男性への恨みが蛇となって現れる。歌舞伎では1時間近くを1人の女形が踊りぬく。白拍子花子が道成寺の鐘供養に訪れ、舞を次々に披露するうちに鐘に飛び込み、蛇体となって現れるという女の悲しくも切ない情念が描かれている物語である。
Artist
凹凸のある下絵装飾が最大の特徴
吟子
彩り豊かで金彩(きんだみ)・白金彩を施した、華やかな作品を生み出す陶芸作家。作品本体は手捻り。泥彩という技法を用いている。色泥土を塗り重ねる回数が圧倒的に多く、他の作家とは明らかに一線を画している。凹凸のある下絵装飾が吟子の最大の特徴となっている。作品のテーマは「女の情念」「祝いと呪い」「善と悪」「醜の中にある美」という相反するものを表現。
Art Style
自身が求める金色、白金色の深さを求め、作品への執念が唯一無二の芸術へと昇華
陶芸
吟子の作品本体は、手捻りである。機械に頼ることなくひたすら自らの手で土を捏ね、成形し、形づくっていく。指先の感覚ひとつで自由に造形を繰り広げられる。表面装飾は線彫り後に泥彩で下絵を施し、素焼をする。この色泥土を筆にて少しずつ塗り重ねて凹凸をつけていく。何度も何度も塗り重ねて模様を盛り上げ、立体的に仕上げる。この凹凸のある下絵装飾が彼女の最大の特徴である。下絵を施したのちに素焼、施釉して本焼し、更にマット金、マット白金で金彩を施す。素焼、本焼、金彩に至っては3回焼成、完成までには計5回焼成する。なぜ金彩を3度も焼成するであろうか。それは、自身が求める金色、白金色の深さを求めるためである。彼女の作品への執念が唯一無二の芸術へと昇華させている。
Roots
浮き彫りとは異なる柔らかな凹凸が現れる
泥彩とは、素焼き前の素地表面に顔料や金属を混ぜ合せた泥(色泥土)にて彩色する、下絵の装飾技法である。泥彩という技法自体は然程珍しい技法ではなく、特に難しい技法ではない。しかし、吟子の作品は、色泥土を塗り重ねる回数が圧倒的に多く、泥彩の難易度が上昇する。色泥土を盛る加減を見誤るとはく離する。湿度管理が重要である。常に素地の湿度を一定に保ち、極力早く下絵の段階を仕上げねばならない。「程よく乾かす」ということが作品を成功させるポイントとなる。この地道な努力の積み重ねにより、浮き彫りとは異なる柔らかな凹凸が現れる。
バレエ、歌舞伎、音楽、ライブをよく見に行くという。その人が放っている光を感じ、インスピレーションを受け、作品に反映させている。