東京・浅草。雷門からほど近い下町の一角に、2024年春「Hand Roll Tokyo」は生まれました。観光客や地元の人々で賑わう浅草で、片手で食べ歩きできる巻き寿司を専門に提供するお店です。寿司といえば高級店での特別な食事を思い浮かべる人も多い中、「気軽に楽しめる日本の寿司」を掲げたこの店には、店主・寺北大悟さんの20年越しの想いが込められています。
寿司のルーツは“気軽さ”にあった
現代では「寿司=高級」というイメージが定着していますが、江戸時代の寿司はまさに“ファストフード”。屋台で立ち食いし、職人が目の前で素早く握る——それはせっかちな江戸っ子のライフスタイルに合った合理的で粋な食文化でした。
寺北さんはこう話します。
「今やお寿司は座ってゆっくり食べるものになってしまった。でも、もともとは誰でも、気軽に、1つから楽しめる食べ物だったんです。その原点を現代にもう一度取り戻したいと思いました。」
巻き寿司にかける20年の夢
寿司を愛する寺北さんは、20代の頃に寿司ネタメーカーに勤務。そのときに出会った“海鮮恵方巻”が強いインスピレーションになりました。「おにぎりの専門店はあるのに、巻き寿司の専門店は見当たらない。手軽に食べ歩きできる寿司があってもいいのではないか」——そう考えてから、20年近くの歳月をかけて夢を温め続け、2024年に浅草で「Hand Roll Tokyo」をオープンさせたのです。
店では素材へのこだわりが徹底されています。パリっと香り高い海苔、丁寧に炊き上げたお米、そして新鮮で彩り豊かな具材。さらに食べ歩き文化に合わせ、醤油を粉末状にするなど工夫も凝らしています。ひと口食べれば、誰もが「ん〜まっ!」と声をもらしてしまう——そんな瞬間こそが寺北さんにとって最大の喜びです。
海外からの温かい反応
浅草という立地ながら、まだ海外からの観光客には十分に知られていないHand Roll Tokyo。しかし、その可能性は大きいと寺北さんは信じています。
印象的な出来事として語ってくれたのは、オーストラリアから来た観光客の家族との出会いです。巻き寿司店の数がマクドナルドより多いともいわれるオーストラリア。その家族は何度も巻き寿司を追加注文し、最後には「美味しかった!」と握手を求めてくれました。さらに子どもからは、お礼にコアラのマスコットキーホルダーをプレゼントされたそうです。今もそのキーホルダーは店内に飾られ、大切な記念としてお客様を見守っています。
世界を見据えたビジョン
寺北さんの夢は浅草にとどまりません。国内でのフランチャイズ展開を進め、その後は海外へと広げていきたいと考えています。「誰でも簡単に巻き寿司を作れる仕組みを整えているので、世界中での展開が可能です。寿司店というより、マクドナルドのように誰もが気軽に立ち寄れる“巻き寿司ファストフード”を作っていきたいんです。」
それは単なる飲食ビジネスではなく、日本の寿司文化を世界に発信する試みでもあります。海外では巻き寿司店が多いものの、作り置きや低品質な食材が目立つことも少なくありません。だからこそ、Hand Roll Tokyoでは「本物の巻き寿司」を提供することにこだわっています。
日本人にも外国人にも届けたい“体験”
訪日観光客にとって、浅草は日本文化に触れる場所。その旅の一コマに、寿司という日本らしい体験を加えてもらいたい——それが寺北さんの願いです。
「最高に新鮮な具材、パリパリの海苔、ふっくらした酢飯。その組み合わせを片手で気軽に楽しめるのが巻き寿司の魅力です。食べ歩きでも、ちょっとした休憩でも、ぜひ日本の本物の巻き寿司を体験してほしいですね。」
Hand Roll Tokyoは、単なる飲食店ではなく、日本文化の一端を未来へつなぐ場所。そして、江戸時代から続く“気軽に楽しめる寿司”の精神を現代に蘇らせる挑戦です。
浅草を訪れる際には、ぜひその一本に込められた店主の想いに触れてみてください。きっと旅の記憶をより鮮やかに彩ってくれるはずです。
<店舗情報>
Hand Roll Tokyo 浅草店 (HP)
Hand Roll Tokyo 浅草店 (Instagram)
〒111-0032 東京都台東区浅草1-12-6 1F
11:00 - 18:00
定休日:金曜
TEL:03-4400-2182