伝統×革新、日本の染色美を世界へ

世界を魅了する日本の染色技術

伝統と革新が交錯する京都の中心部に、小さいながらも特別な染色工房「アートユニ」がある。このアトリエは、何世紀にもわたって受け継がれてきた日本の染色技術と現代のファッションが出会う拠点であり、その独自の技術は世界中のデザイナーたちを魅了しています。

国内外のコレクションブランドにテキスタイルを納め、2022/23年秋冬パリコレクションではデザイナー・三宅一生による『イッセイミヤケ』のコレクションに手描き染めの布地が採用され、世界を魅了しました。

京都の小さな染め工房で生み出し続けてきたパリコレ作品の数々…。日本の伝統の染色技術を守りながらも”染め=着物”という枠を超え、現在のニーズに合わせてさらなる進化をし続けています。

染色職人・西田清が生み出す”伝統と革新の絶妙なバランス”

1975年に染色の委託加工業として設立されたアートユニ。アートユニの成功の背景には、50年の経験を持つ染色職人・西田清さんの技術が大きく関わっています。

染色の道に入って50年を超える西田さんは、常に「ヨソではできないこと」を追求し続けて、独自の技法を生み出してきました。

「ひび割れ染め」「墨流し」「弓パッチン染め」などの手作業による独特の技法を持っていて機械だけでは出せない繊細さを追求し、海外大型ブランドにも評価されています。

「機械では再現できない『割れ具合』『かすれ』『流れ方』を出せるのが手作業なんやけど、ハイブランドほど、その繊細さを求めてきちんと評価してくれているのかもしれへんな。」と話します。

西田さんの技術

西田さんの技術はこれだけではなく、平安時代の貴族の遊びが発端とされる伝統的染色技法「墨流し」を現在にアレンジし多彩な模様を描く「流彩染め(りゅうさいぞめ)」、伝統的なろうけつ染めで使うろうの代わりに餅米と活性炭を混ぜた糊を使用してひび割れ模様を作る「彩纈染め(さいけつぞめ)」も独自の技法として生み出しています。

「彩纈染め(さいけつぞめ)」は水洗いする際の環境への負荷を抑えることができる染め方で、地球にやさしい染の技術としてビッグメゾンをはじめファッション業界で高い評価を得ています。

「流彩染め(りゅうさいぞめ)」は手作業と熟練の技術が生み出す染の技で日本の染色技術をアートとして確立しています。

完全手作業による高品質

アートユニの染色技術は、すべて熟練した職人の手によって行われています。

「自分には、量産や低価格化よりも、独自性の高いものを提供する方向が合っている。「機械には出せない“ひび割れ”や“墨の滲み”こそ、うちの強みやから」と、西田さんはあくまで手染めにこだわり続けています。

この完全な手作業から生まれるわずか0.01ミリグラム単位で染料を調整していく細部にまで行き届いた染色は、深みのある色合いと独特の風合いを醸し出しています。

日本の精神性と美しさ

アートユニの染色技術は、シンプルながらも深い味わいがあり、日本の精神性を色濃く反映しています。

「工房に来てもらって、『これが日本の染めや!』って体験してもらえたら、絶対忘れへんやろ」。

手作業でしか生み出せないその美しさは、日本特有の伝統的な価値観を体現しています。染色を通じて、それを触れた人々に日本の精神性とその美しさを感じ取っていただけることでしょう。

日本のシンプルで美しい生活の象徴が多くの共感を呼び起こし、革新と伝統の世界の架け橋として世界へ発信し続けています。