ガイドブックにはまだ少ない京都の隠された顔、
将軍塚青龍殿


京都と聞けば、金閣寺、清水寺、嵐山…と、有名どころはすでに巡ったという方も多いのではないでしょうか。
そんなあなたに行って欲しい場所が今回紹介する「将軍塚」。
東山の山頂にあり、歴史はもちろん、静けさに包まれた自然や心を癒す景観が、絶妙なバランスで共存しています。
京都市内を一望できる絶景ポイントでありながら、観光客で混み合うことの少ない、まさに「知る人ぞ知る」スポットです。

 

平安京を見守る丘 〜将軍塚の歴史〜

将軍塚のはじまりは、1200年以上も前、平安京が誕生した時代(794年)にさかのぼります。
日本の第50代天皇である桓武天皇が新しい都を築くにあたり、この東山の地に「将軍の像」を埋め、東の守り神・青龍に見立てて都を守らせたという伝説が今も静かに語り継がれています。
この794年という年、実は世界中が大きく動いていたタイミングで、ヨーロッパではカール大帝と言う王様が広大な領土をまとめあげ、中世の始まりを築こうとしていました。
また、中国ではかつての超大国・唐王朝が揺らぎ始め、イスラム世界ではバグダッドが学問と芸術の中心地として輝いていた時代です。

そんな中、日本もまた、新しい都と文化を育てる道を歩み始めていたのです。

そしてこの伝承を未来へとつなぐように、2014年、山頂に青龍殿が建立されました。

堂内に祀られているのは、国宝・青不動明王像の高精細なレプリカ。

写真には残せませんが、その静けさと迫力は、訪れた人の心に深く焼きつくことでしょう。

見渡す限りの京都、知ってる景色が違って見える

青龍殿の見どころの一つが、広大な大舞台からのパノラマビュー。
清水寺の舞台の約4.6倍という広さを誇り、京都市内をぐるりと見渡すことができます。

いい景色は清水寺だけではありません。
昼間は京都の町並みと山並みを、夕方には空がオレンジ色に染まるマジックアワーを、夜にはきらめく夜景を。
時間帯によってまったく違う顔を見せてくれるのが、この舞台の魅力です。

さらに、庭園ファンには嬉しい情報。名匠・中根金作(※1)による枯山水庭園も見逃せません。
花や苔の繊細な表情と、石の静けさが調和する空間は、心を整える場所としておすすめです。
※1:日本庭園界ではとても有名で尊敬されている造園家

混雑知らずのゆる京都を散歩

将軍塚青龍殿の周辺は、有名な観光地とは違い、落ち着いて過ごせる静かなエリアです。
時間に追われず、観光客も多くないので、自分のペースで歩けるのが魅力です。

将軍塚青龍殿から少し足を延ばすと、京都でも特に風情ある散策ルート「哲学の道」へとたどり着きます。
銀閣寺から南禅寺へと続く約2kmの小径は、川沿いに桜や紅葉、新緑が季節ごとに彩りを変え、まるで絵巻物のような風景が広がります。

水の音を聞きながら、ゆっくりと歩くこの時間は、観光というより“自分を整える旅”に近い感覚かもしれません。

道沿いには、小さなカフェ、ギャラリーが点在しています。
木漏れ日の差し込む店内で、こだわりのコーヒーや手作りのケーキを味わいながら、窓の外の緑に目を向けるひととき。
そこには、時間の流れが少しゆっくりになるような不思議な心地よさがあります。

さらに足を伸ばせば、荘厳な門構えの「南禅寺」へ。
広大な境内には、レンガ造りの水路閣や、静かに佇む庭園があり、歴史の重みと自然の静けさが見事に調和しています。

そして見逃せないのが、南禅寺の近くにある「蹴上インクライン」。
かつて船を運んだ傾斜鉄道の跡地で、今では線路の上を自由に歩くことができるフォトジェニックなスポットです。

春には線路を覆うように桜が咲き誇り、まるで過去と現在が交差するような不思議な空間に変わります。

知ってるようで知らない京都を、あなたの足で見つけよう

将軍塚青龍殿は、ガイドブックの表紙にはあまり載らないかもしれません。
けれど、「本当に京都らしい体験をしたい」人にはぴったりの場所です。

  • 人混みから離れて
  • 自然と歴史にふれながら
  • 静かな時間をじっくり楽しむ

京都リピーターにこそ訪れてほしい、そんな特別なスポット。
次の京都旅では、ぜひ一度、自分だけの“京都の顔”を見つけに将軍塚へ足を運んでみてください。